◎甲子園ボウル IN 長居 『残り6秒の攻防』

文・写真/岩瀬孝文(関東学生連盟広報委員・立正大監督 スポーツライター・フォトグラファー)




 ハイレベルな点の取り合いになった日大-関学の甲子園ボウル。
 手に汗握るシーソーゲームに要所でのハードヒットが炸裂、実に見応えある試合となった。
 特に日大はRB21金がその安定した大型OLに守られ、スピードあるカット走法で、ロングゲインを重ねてランTDに96ydキックオフリターンTDと大活躍、関学守備を寄せ付けなかった。しかし「負けは負け、勝たないと意味がありません」と言い放った。

 ショットガン攻撃を駆使した須永コーチは「もっといいタイミングの組み合わせで、プレイを指示すればよかった」と無念の表情を見せた。また左足首のケガで欠場したQB10木村を「出してあげたかった」そして閉会式後には相手のマークがきつかったWR25小嶋を「よくやった」とねぎらいの言葉をかけた。

 強力なDLとスピードあるセカンダリーを作り上げた守備の森コーチは「近くて遠い甲子園、関学があそこまでQBランを使ってくるとは…」と絶句していた。LBとSFの切れ目にきれいに投げ込む関学QB9三原、ハードタックルの日大DB陣に対し三原は果敢にQBランを仕掛けた。この攻めが後半にじわじわと利いてきた。守備の疲れを誘発したのだ。

 第3Qまでは一進一退、第4Qになると一瞬の隙を突いてQB12平本からWR23秋山へロングパスが決まる。さらに右奥へのWRリバースで秋山が再度TDをあげ、日大がリードしていく。

 最後は真っ向勝負の第4ダウン、左パワープレイでRBがエンドゾーンへ流れ込むようにダイブ、TDを決めて決着のスコアは38−41、僅差の敗退。

「すべて私の責任、選手はよくやってくれました。すみません」

 疲れ果て、目を泣き腫らした内田監督は、がっくりと肩を落とした。試合中はTDを決め勇んでベンチに戻ってきたWRを抱き止め、にこやかに頭をたたいて誉め喜んだ。つねに選手に対して愛情が満ちあふれていたベンチと内田監督。それは17年ぶりに甲子園に帰ってきた日大フェニックスの新しい姿だった。

 来季さらに成長する日大。日頃から須永コーチが熱心に指導したエースQB木村が欠場、その木村が出ていればもう少し楽な展開になっていたのか。先、昔ながらの決め打ちのQBランを完成させることがその王道なのだろうか。

 QB12平本は前半、緊張のせいで球が浮き2本のインターセプトを喫しチャンスを逃した。が、「思い切りやってこいとみんなが元気づけてくれた」その言葉で、すぐに心を立て直していた。また、ここまでチームをまとめあげた鈴木主将は「あせらずに最後まで自分たちのフットボールをしたかった」と前を向き、胸を張った。

 最終第4Q、残り1yd、極限の攻防は見ているものを最高の興奮の坩堝に引き込んだ。